第13回シンポジウム:アピール文
【2016年7月12日 第13回シンポジウムにて発表】
安倍政権は、参議院選挙の期間中、憲法改正は争点ではないと言い続けた。国政選挙は、過半数を得た政党に白紙委任するものではない。成熟した民主主義社会における選挙には最低限のルールがあるはずである。憲法改正の争点化を故意に避けた安倍政権が、そうやって得た議席によって憲法改正の手続を進めることは、そのルールに反する。
それ以前に、新安保法制の制定によって国のあり方を実質的に変更した安倍政権に憲法改正を進める資格がない。なぜなら、憲法をまず破っておいて、次にそれを隠ぺいするための改正がなされるならば、権力者を拘束する憲法というコンセプトが否定されてしまうからである。
つまり、憲法改正の真のねらいは、違憲の行為をなかったことにすることではないだろうか。安倍政権には、そのような特徴がみられる。たとえば、安倍首相が「わたしは立法府の長」と述べ、内閣総理大臣としては致命的な間違いをおかしても、後で議事録を変更し「行政府の長」としてしまう。また、「聴取不能」の状況でなされた参院特別委員会における新安保法制の採決について、「可決すべきものと決定した」と議事録に付け加えられたことも記憶に新しい。21世紀の成熟した民主主義は、そのようなねつ造を許さないだろう。
先日おこなわれた参議院選挙では、選挙区での野党共闘は、「立憲主義の回復」を掲げて一定の成果を出した。安倍政権の争点隠しと総合して評価するならば、この国の有権者は、決して新安保法制を承認したわけでもなく、憲法の改正に賛成したわけではないと結論づけてよいだろう。
参議院選挙も終わり、これから新安保法制の実行をめぐる動きが大きな問題になるであろう。わたしたちは、憲法9条に違反する新安保法制は、自衛隊員と一般国民の生命を危険にさらすのであり、発動してはならないことを、学問研究の立場から、さらに主張していきたい。

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