第14回シンポジウム:アピール文
【2016年8月9日 第14回シンポジウムにて発表】
2016年7月の参議院選挙の結果を受け、メディアは改憲派が両院で3分の2の議席を確保したことを強調している。
しかし、参議院選挙において、憲法改正は政権によって意図的に争点からはずされた。連立与党に投票した有権者は、憲法改正に賛成したわけではないのである。それにも拘わらず、改憲論議が進むとすれば、国民の意思を無視したものといわざるをえない。
次に憲法改正を選挙の争点にするのであれば、どこか特定の条文をあげ、改正すべき理由とともに改正案を提案するのが筋であろう。「憲法改正」が争点になっていない選挙の結果、どこの条文かが特定されずに「憲法改正」が進むとすれば、これは憲法改正のための憲法改正にほかならず、憲法の軽視といわなければならない。
憲法とは、個人に人権を保障し、国民が人権を行使して民主政治を実現していくための規範である。そのような自由民主主義国家の基盤たる憲法が、憲法によって権力を与えられているはずの国会議員や内閣によって軽視されているのである。代表者を選出する制度のあり方に問題はないか、真剣に考えるときであろう。
国会議員や内閣は、どこの条文か定まっていない改憲議論よりも、国民のためにやるべきことがあるのではないか。憲法はまだ一字一句変更されていないのである。なによりも新安保法制の憲法適合性について、改めて精査すべきであるろう。
それだけではない。新安保法制で追加されたPKOにおける「駆けつけ警護」と「宿営地共同防護」を南スーダンPKOで実施しようとする動きがあるが、その南スーダンでは7月に再び戦闘が勃発したと伝えられている。国会と内閣がやるべきことは、不毛な憲法改正論議ではなく、南スーダンの状況が、PKO法に規定されている5原則に適合しているかどうか、真剣に検討することであろう。もし、内戦状況にあるのであれば、法律に従い、自衛隊は撤退しなければならない。自衛隊員の命を守るためにそうすべきなのである。
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