第28回シンポジウム:アピール文
【2017年10月10日 第28回シンポジウムにて発表】
2014年12月の突如の衆議院解散総選挙から3年経たないうちに、安倍内閣は、ふたたび衆議院を解散した。6月に野党から求められた憲法53条に基づく臨時会開催の要求を3か月放置したあげくの臨時会冒頭解散である。
臨時会について、憲法53条後段は、「いづれかの議院の総議員の四分の一以上の要求があれば、内閣は、その召集を決定しなければならない」と規定する。その趣旨は、国民の代表機関であり国権の最高機関たる国会が、内閣に対して、行政権の行使について説明責任を負わせることにある。日本では、90年代の政治改革以来、政権は、国会の多数を獲得した以上、基本的にやりたいことはなんでもできるというような考え方が広まっているように思われる。しかし、その「なんでも」には、憲法が求める公正な手続を無視することは含まれない。まさに、53条が規定するように、権力を有する多数派が、少数派に対して説明責任を果たすことこそが、憲法の核心である。2017年衆議院解散は、このような憲法の核心部分を否定するものであることを改めて確認しておきたい。
この解散は、2012年12月以来、安倍首相が採ってきた政治手法の集大成である。本会が今年の6月に発表した6・13アピールを引用し、安倍政権の政治手法について確認してみよう。「①内閣法制局長官の人事に介入することによって、自衛隊発足以来60年間続いてきた憲法9条に関する内閣法制局の見解を変更させた。②2014年12月に、ほとんど実質的な理由のない恣意的な衆議院解散を強行し、新安保法制の制定に備えた。③2015年9月19日に、憲法9条違反の新安保法制を制定した。衆議院でも参議院でも委員会において『強行採決』がおこなわれた。④新安保法制強行後、憲法53条の要件を満たした国会議員の要求があったにもかかわらず、臨時会の召集を決定しなかった。⑤2016年7月の参議院選挙において『憲法改正は争点ではない』と言い続けて3分の2の議席を確保し、その約束に反して、憲法改正を進めようとしている。」このアピールが発表された2日後、共謀罪が制定された。しかも、同法案の参議院の審議では、委員会採決を省略する「中間報告」という卑劣な手段が使われたことも記憶に新しい。
翻って考えるならば、新安保法制の問題点は、憲法9条を実質的に変更するという内容の問題に加えて、戦後70年間維持されてきた憲法の意味を閣議決定によって根本的に変更したという手続の問題が大きい。憲法の意味を根本的に変更するのであれば、正式な憲法改正の手続を踏まなければならない。このような当たり前のことが守られない社会において、市民の幸福もまた犠牲にされると言わざるを得ない。なぜなら、このようなことが許されれば、わたしたちが憲法をもっていることの意味そのものが失われるからである。
今回の総選挙では、手続を無視しても勝てばよいという政治的手法が問われている。そして、選挙の結果がどうであろうと、わたしたちが憲法を持っている限り、手続の実質的公正さが実現されるべき価値であることは今後も変わりがない。
わたしたちは、この当たり前のことを、これからも主張していきたい。学問も、そのような社会の実現のためにあるはずであるからである。
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