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第29回シンポジウム:アピール文

【2017年11月4日 第29回シンポジウムにて発表】


2017年衆議院総選挙は、「国難」を理由にしておこなわれた。解散による政治の空白期を作ってまで対処しなければならないとされた「国難」とは一体何だったのか、未だに国民に対して十分な説明はない。


しかし、それ以上に驚くべきは、解散総選挙が決まるのとほぼ同時に、野党第一党が、できたばかりでほとんど何の実績もない別の政党に吸収されるという、およそ、民主主義国であれば考えられないような事態が起きたことである。そして、当初、新政党から公認を得るためには、新安保法制の承認と憲法改正への賛成が条件とされた。その条件を受け入れられない候補者は、無所属で出馬するか、別の新党を作るしか選択肢がなくなったのである。

こうして野党が分裂した選挙の結果、連立与党は3分の2以上の議席を確保した。しかし、この結果は、小選挙区制という選挙制度がなせる業である。小選挙区制の下では、野党が分裂すれば、連立与党に勝てるはずがないのである。むしろ注目すべきは、有権者は、「排除」という言葉を使って新安保法制と憲法9条改正という「踏み絵」を踏ませようとした政党を支持しなかったということである。そうではなく、排除されそうになり新党設立を余儀なくされた候補者が作った政党が躍進し、野党第一党となった。そして、「排除」をしようとした政党は、その方針を事実上撤回しなければならなくなったのである。要するに、有権者は、決して新安保法制を承認したわけでもないし、憲法改正に賛成したわけでもないのである。

とはいえ、憲法改正に積極的な安倍政権を支える政党が、両院において3分の2以上の議席を維持したことは事実である。憲法改正の議論は進むであろう。ここで重要なことは、何のための憲法改正かを徹底的に可視化することである。憲法9条の改正は、決して、自衛官の誇りや憲法学者の違憲論のために行われるわけではない。これまで、できないと考えられてきたこと、すなわち、集団的自衛権の行使を憲法上可能にするために行われるのである。

集団的自衛権の積極的行使は、アメリカ合衆国の要求でもある。しかし、沖縄の現状をみれば、日米安全保障条約の強化が日本国民にとって決して利益にならないことは明らかである。わたしたちは「沖縄のいま」に何を見るべきだろう? 東アジアの現実、日米安保の現実、「自己決定権」そしてその根っこにある歴史意識(伝え続けられる戦争経験)と人間の尊厳がいとも簡単に無視される状況、だろう。

この状況に立ち向かうための鍵は、憲法9条にある。憲法9条の規範を重視して、アメリカ合衆国と適切な距離をとることは、日本国民の負担を軽減するだけでなく、日本が他国と戦争をすることを抑制し、自衛隊が正式に「殺し殺される」組織へと変化することへの歯止めとなるはずである。


わたしたちは、憲法9条の改正に反対するとともに、9条を活かし、沖縄の人びとのみならず、日本各地において、はては東アジアやあるいはジブチにおいて基地のもとで苦難の暮らしを生きている人びとの負担を軽減するべきことを強く主張する。


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