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第30回シンポジウム:アピール文

【2017年12月12日 第30回シンポジウムにて発表】


新安保法制の撤回を求める信州大学人の会のシンポジウムは、今回で第三〇回を数える。今回のテーマは、松本と戦争である。わたしたちは、戦争の被害の歴史とともに加害の歴史を知る必要がある。それは、二度と同じような戦争を起こしてはならないからである。


新安保法制は、専守防衛を堅持してきた日本政府の憲法解釈を変更し、日本が海外で戦争を行うことを可能にした。これは、実質的な憲法9条の改正であり、憲法96条の正式な手続をとらずにはできないことがらであった。


わたしたちは、手続を無視した新安保法制の制定を心の底から危険であると考える。戦争をできる国にするのであれば、日本国民が先の戦争の体験を踏まえて、真剣に議論をおこなった上で、憲法の明文改正によってなされる必要があった。その手続を無視してなされた安倍政権による実質的憲法改正は、憲法9条のみならず、およそ権力が憲法に縛られるという立憲主義という概念を破壊するものである。そのいきつく先は、戦争をする国であり、自由のない社会であろう。


日本をそのような社会にしないために、市民は憲法を利用して、権力を批判していかなければならない。そして、権力に対して、十分な説明責任の遂行を求めなければならない。


この観点から非常に問題なのは、今国会において、衆議院における野党の質問時間が大幅に削られ、与党に配分されたことである。


内閣が国会の信任に依拠する議院内閣制の憲法構造は、内閣が国会に対して説明責任を負うところにその核心がある。そして、内閣は国会に対して説明責任を負うことによって、同時に、国民に対しても説明責任を果すのである。政党内閣が通常化した20世紀において国会の役割を果たしてきたのは野党である。したがって、野党の質問時間を減らすことは、国民に対する説明責任の回避という隠された目的があるのではないかと疑わざるを得ないのである。


わたしたちは、来年の通常国会において、従来通りの十分な質問時間が野党に確保されることを強く求める。内閣が説明責任を負わなければならないのは、野党議員のためではなく、多くの国民のためだからである。


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