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第35回シンポジウム:アピール文

【2018年5月8日 第35回シンポジウムにて発表】


2018年3月25日、自由民主党は党大会を開き、①自衛隊の憲法9条への明記、②緊急事態条項、③参議院の合区解消、④教育の充実の追加の4つの項目で憲法改正を進めていくことを確認した。

憲法改正について、4つも改正項目を挙げること自体、この憲法改正の提案が、改正のための改正であることを示すものである。なぜなら、憲法というものは、国家や社会の基盤を形成しているのであって、それを変更する必要がある場合に限って改正が行われるのが通常だからである。日本国憲法は、その公布以来71年という長い時間が経過し、日本社会にしっかりと根をはっている。自民党が提案する4項目には、それらを追加しなければならないほどの必要性が示されているであろうか。

日本国憲法は、教育の充実をなんら妨げてない。現在、大学の学費は高額で、高等教育を受けたい人々の妨げになっている。自民党が、本当に教育の充実をしたいのであれば、大学の学費無料化をはじめとする教育の充実は、今すぐ法律を作って実施すればよいのであり、憲法を変える必要は全くない。

合区解消も、憲法を改正しなければできないというわけではない。また、一票の格差に関する違憲状態の判断が最高裁であり、それを解消するために憲法を改正するという論理は一見もっともらしく聞こえるが、しかし、話はそう簡単ではない。参議院議員を地域代表にするのであれば、「全国民の代表」と規定する憲法43条と齟齬が生じるし、また、その場合に、参議院の権限が今のままで良いのかという検討すべき課題があるはずである。このような原理的な問題を考察せずに、単に、参議院選挙の選挙区において合区が可能になるような憲法改正をしようというのは、いかにも場当たり的な提案である。合区解消は、本来狙われている憲法改正のための「だし」なのではないか。

自民党が、本当に実現したいのは残りの二つであろう。憲法9条に自衛隊を追加するという案は、首相によると、憲法学者の違憲論を封じるためになされる。しかし、これは、真の目的ではないだろう。真の目的は、集団的自衛権の行使を認めた新安保法制を合憲化することである。このように真の目的を明示しないまま、憲法改正の提案をすることは、主権者国民を欺こうするものであるといわなければならない。


それにしても、学説の主張を封じるために、憲法改正をしようという提案がなされることには、恐ろしさを感じざるをえない。大日本帝国が、学問の自由を踏みにじることによって、戦争へと向かった歴史をもう一度確認すべきだろう。


緊急事態については、内閣の独立命令を認める要件が不十分である。緊急事態の要件を明確化・厳格化し、緊急事態条項が濫用されない仕組みが必要だが、それが準備されていない。わたしたちは、ワイマール憲法を破壊し、独裁政権を樹立したナチスが利用したのが、同様の緊急事態条項であったことを思い起こす必要があるだろう。


以上のように、自民党の改憲4項目は、主権者国民に提案されるに値する十分な内容をもってない。憲法を改正したいのであれば、真に検討に値する案を提示してもらいたい。卑怯な手で国のあり方をかえようとするのは、もうそろそろやめてもらいたい。わたしたちは、自由民主党に対し、立憲民主政国家の政権政党として責任ある議論をおこなうことを強く求める。


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