第38回シンポジウム:アピール文
【2018年8月7日 第38回シンポジウムにて発表】
「人類は歴史を忘れ、あるいは直視することをやめたとき、再び重大な過ちを犯してしまします。だからこそ私たちは「ヒロシマ」を「継続」して語り伝えなければなりません」。8月6日、「原爆の日」を迎えて発表された広島平和宣言のなかで、松井一実市長はこのように述べた。
4月に実現した南北首脳会談では、「核のない朝鮮半島を実現するという共通の目標」が確認され、6月に史上初めて開かれた米朝会談でも、「朝鮮半島に、永続的で安定した平和の体制を構築するため、共に努力する」という宣言がなされた。このように、東アジアの情勢は歴史的な転換がもたらされる可能性が高まってきている。その転換には、アメリカの国力の衰え、中国の台頭、韓国の民衆意識の変化など、長期的な変化が影響している。そのため、今後も様々な紆余曲折が予想されるものの、平和を目指すという基本的な方向性が大きく揺らぐことはないだろう。
その中にあって、日米安保体制の維持強化と新安保法制の導入、さらには憲法改正で対応しようとする安倍政権は、東アジア情勢の歴史的な転換を妨げ、平和を築く障害になっている。2019年度の防衛関係費は、5兆円を超え過去最大となる見込みである。その中には、総額が4000億円を超えるとも言われる陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」も含まれている。「イージス・アショア」の配備については、国内的には、その必要性や安全性が十分に説明されないまま進められていることに対して批判の声が高まっており、国際的には、北朝鮮からは非難を受け、ロシアからは懸念を表明されている。
現状を直視しない安倍政権の姿勢は、国連で採択された「核兵器禁止条約」への不参加にもあらわれている。被爆者をはじめ多くの市民から、被爆国として条約への署名・批准を求める声があがっているにもかかわらず、政府は理由を十分に説明しないまま、繰り返し不参加を表明している。
松井市長は平和宣言のなかで次のように述べている。「私たち市民社会は、朝鮮半島の緊張緩和が今後も対話によって平和裏に進むことを心から希望しています。為政者が勇気をもって行動するために、市民社会は多様性を尊重しながら互いに信頼関係を醸成し、核兵器の廃絶を人類共通の価値観にしていかなければなりません」。
私たちは、憲法の前文にある「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しよう」という精神に基づき、日本が東アジアの平和を築くために貢献するよう努力し続けることを決意しなければならない。
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