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第16回シンポジウム:アピール文

【2016年10月11日 第16回シンポジウムにて発表】


約一年前に強行採決された憲法違反の新安保関連法に基づき、日本は戦争する国へと着実に歩み始めている。安倍政権は新安保関連法で新たに設けられた「駆けつけ警護」の任務を、南スーダンに駐留する陸上自衛隊に付与しようとしている。これにより、憲法が禁止する武力行使に自衛隊が参加し、日本が戦後初めて戦争をする国となる具体的な危険が迫っている。国会では衆参で3分の2の勢力を得た安倍政権により憲法改正の発議に向けた議論の土台づくりとそのための駆け引きが盛んに行われており、日本国憲法を守り実現するための闘いは、戦後最大の山場を迎えている。

このような状況下で、私たちが同時に問わなければならないのは、この国における民主主義のあり方である。2015年の新安保法制の成立時、全国で反対運動に立ちあがった人々が叫んだのは「憲法を守れ」に加えて「民主主義って何だ」「民主主義を守れ」ということであった。国民から選ばれ国民を代表するはずの国会が、人々の疑問や反対を置き去りにして暴走する姿を目の当たりにして、多くの人々がこの国の民主主義を再構築しなければならないことを痛感したのである。

民主主義の再構築にとって、地域社会という人々の自治空間は、重要な意味をもつ。安保法制反対運動では、北信から南信まで、信州各地で運動が展開された。小さな村で、久方ぶりにデモが開催されたとの報道が、新聞紙面を飾ったことはわたしたちの記憶に新しい。保守化の度を深める日本社会において、仕事や家事の合間を縫って人々が街頭に出かけていったことの意味と意義を考え、持続的な運動を可能にする条件の解明につなげていくことが、科学研究に携わる者が成しうる市民社会への貢献になるだろう。

歴史をひもとけば、信州は、戦前戦中のファシズム期に、人々が戦争に駆り立てられていった被害と加害の歴史をもつ。そして、加害の歴史に真摯に向き合う記憶の継承に向けた姿勢や具体的なとりくみが、大小さまざまな規模の地域でなされてきたことも、信州の地域特性だろう。計り知れない悔恨や痛苦を伴いながら、歴史の忘却に抗い、被害と加害の両面をもった歴史を各地で継承してきた〈記憶化への営み〉が、平和と民主主義を守るさまざまな行動の出発点となっているのである。

民主主義を守るための民衆的取り組みの持続的な展開のために、研究者であり、生活者でもあるわたしたちにできることは何か。個々人と地域の分断が進む日本社会の中で、「民主主義と何か」と問い、保革軸を超えた連合形成を可能にし、人々の街頭行動を可能にした諸条件を、地域と現場の固有の文脈を大切にしながら、ていねいに解明し、「遠くまで届く言葉」を作っていくことだろう。これからも、多角的な学びのための場を継続していこう。


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